1. HOME
  2. お知らせ
  3. スーパーコンピューター「富岳」変異ウイルスで感染率 最新予測

NEWS

お知らせ

スーパーコンピューター「富岳」変異ウイルスで感染率 最新予測

最新のスーパーコンピューター「富岳」を使ったシミュレーションで、感染力の強い新型コロナの変異ウイルスに感染する確率が、従来のウイルスに比べてどのように変わるのか、最新の結果が公表されました。
インドで確認されたデルタ株では感染する確率は、従来型の2倍程度ある一方、感染した相手と適切な距離を取り話す時間を減らすと感染確率が減ることがわかり、研究グループは基本的な対策を改めて呼びかけています。

神戸市にある理化学研究所の研究チームは、最新のスーパーコンピューター「富岳」を使って新型コロナウイルスの飛まつの広がりを研究しています。
今回は、感染力の強い変異ウイルスに感染した人がいる場合、相手との距離や時間によって感染する確率がどのように変化するのか、シミュレーションしました。
変異ウイルスの感染力は、▼イギリスで確認されたアルファ株を従来のウイルスの1.25倍、▼インドで確認されたデルタ株を従来のウイルスの2.5倍と仮定しました。
まず、通常の声でしゃべっている感染者と、マスクなしで15分間向かい合った場合、相手との距離によって感染する確率がどのように変わるか調べると、▼1.5m離れたときは従来型とアルファ株では、感染リスクが5パーセント程度なのに対してデルタ株ではおよそ10%とおよそ2倍になりました。
▼2メートル離れた場合でも感染リスクはほとんど変わりませんでした。
一方、距離を2.5メートル取ると、3つのウイルスでほとんど差はなくなり、5パーセントを切っています。
また、2メートル離れた相手から感染する確率と接触時間の関係を調べたところ、感染確率が10%に達するのにかかった時間は、▼従来型のウイルスでは45分だったのに対し、▼イギリスで確認されたアルファ株ではおよそ35分、▼インドで確認されたデルタ株では20分足らずでした。
研究グループは「インド株では従来株に比べて2倍程度のリスクがあることがシミュレーションからもわかった。相手との距離に加え、時間の取り方にも注意してほしい」としています。

【飲食店での感染リスクは】。
研究グループは今回、飲食店を想定した感染リスクと対策についても計算を行いました。
4人がけのテーブル2台とカウンターにあわせて16人がいる飲食店で、このうちの1人が従来型のウイルスの感染していると想定し、マスクなしで1時間滞在した場合、飲食店全体での平均した感染リスクとそれぞれの場所ごとの感染確率をシミュレーションしました。
まず、換気装置だけを動かした場合、▼店全体を平均した感染確率は2.48%、▼最もリスクが高かったのは、カウンター席の一番端に座っている人が感染している場合、隣の人が感染する確率で、78.8%となりました。
この状態から客席のエアコンとちゅう房のダクトを作動させると▼店全体を平均した感染確率は2.07%とやや低下し、▼最もリスクが高かったのはテーブル席に座っている人が感染していた場合、その隣の人が感染する確率で、65.5%でした。
飛沫の広がり方を可視化したCGからは、エアコンやダクトをつけると、全体的に空気の流れができ、飛沫が1か所にとどまらず、拡散していくことがわかります。
研究グループは、飛沫が広い範囲に広がることで薄まり、リスクが分散する一方、風下の席にいる人は局所的にリスクが高まることもあると分析しています。
さらにこの状態から、飲食店での対策を想定し、テーブル席の真ん中とカウンター席にパーティションを設置した条件で計算すると、▼店全体を平均した感染確率は0.53%とさらに低下し、換気装置だけの状態と比べ、およそ80%リスクを削減できました。
また、これとは別に、エアコンとダクトをつけた状態で隣同士の距離を広めにとって座ったとき、店全体を平均した感染確率は0.64%で、換気装置だけと比べ、およそ75%、リスクを削減できています。
神戸大学教授で理化学研究所の坪倉誠チームリーダーは「隣どうし距離をあけることは対策としては非常に効果があるが、距離がとれないときはパーティションをつけることで距離をとることとほぼ同等の効果があるということがわかった。部屋全体の感染リスクを下げ、局所的にリスクの高いところを作らないことが対策として非常に重要になる」と話しています。

【天井のファンに効果も】。
さらに研究グループは、部屋の天井に取り付けたファンが、感染リスクにどのように影響するかについてもシミュレーションしました。
シミュレーションでは、縦6.3メートル、横が9.9メートル、天井の高さが3.65メートルの部屋の中で、感染した人と15分間向かい合ったとき、天井に取り付けたファンで飛沫がどのように広がるかをシミュレーションして感染のリスクを計算しました。
その結果、ファンを作動させると飛沫が急速に拡散して薄まり、その効果でファンが作動していないときと比べると、感染のリスクは低くなりました。
特に、相手との距離が1.5メートルより近い場合、感染確率は大幅に低くなっていました。

【焼き肉など卓上ダクト効果も】。
研究グループは、さらに焼き肉店のテーブルなどに設置されている、卓上排煙ダクトの効果もシミュレーションしました。
想定では、4人グループのうちの1人が感染していて、テーブルの真ん中に排煙ダクトが設置されている状況で1時間滞在し、隣、向かい、斜め向かいのそれぞれの方向に10分ずつ、大声で話したと仮定し、シミュレーションしました。
排煙ダクトを作動させていない時、感染する確率は、▼隣の席で43.8%、▼向かいの席で15.1%、▼斜め向かいの席で12.1%でしたが、排煙ダクトを作動させると、▼隣の席で24.8%、▼向かいの席で5.3%、▼斜め向かいの席で5.3%と、感染リスクは3分の1から半分程度に抑えられる結果となりました。

https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20210623/2000047530.html

最新記事