今年6月にスペインで変異したウイルス株「20A.EU1」がヨーロッパ全土に拡大!
新型コロナウイルスに変種 研究者が警告
スペインで突然変異した新型コロナウイルスが、夏以降、欧州で急速に拡大している。現在、欧州各国で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規感染者の大半がこの型を占めているという。ファイナンシャル・タイムズ紙が報じた。
このコンテンツは 2020/11/02 13:51
国際的な研究者チームが新型コロナウイルスの遺伝子変異を確認した。この変異株「20A.EU1」の異常な広がりを説明する研究論文が26日に発表された。
論文は、夏にスペインで休暇を過ごした旅行者らがこの変種を欧州全体に広める大きな役割を果たしたことを示唆している。空港や他の交通機関のハブで入国者の検査を強化していれば、現在欧州で猛威を振るう第2波を封じ込められたのではないかと研究者らは指摘する。
変異株はそれぞれ独自の遺伝情報を持つため、突然異変が起こった起源までさかのぼることができる。
研究論文の筆頭著者を務めたバーゼル大学の進化遺伝学者エマ・ホドクロフト氏は、「20A.EU1の拡大は、これまで実施されてきた予防措置だけでは、この夏に入り込んだ変種の拡大を阻止するには不十分だったことを示している」と言う。論文は査読後、専門ジャーナルに公表される予定だ。
スイスとスペインの科学者チームは現在、この変種がその他の変異株よりも致死性や感染性が高いかどうか、急ピッチで解明に取り組んでいる。
ホドクロフト氏は、「感染力の上昇や病状に影響を与える突然変異が起こったせいでこの変種が『急速に』拡散したと示す証拠はない」と強調する一方で、この変種20A.EU1が、COVID-19を引き起こす従来の新型コロナウイルス(Sars-cov-2)のいずれの変異株とも異なる点も強調している。「欧州におけるコロナウイルスのゲノム配列を研究し始めて以来、これだけの勢いを持った変種を見たことがない」
研究チームはウイルス研究室と協力し、この新しい変種がヒトの細胞に侵入に関与する「スパイクタンパク質」に特殊な変異を起こしていないか調査中だ。ここが変異すると、ウイルスの性質が変わる可能性がある。
ウイルスは全て、突然変異を起こす。遺伝子コードの個々の文字が変化し、それに応じ新しい系統や株に分類される。Sars-Cov-2には、既にD614Gと呼ばれる別の変異も確認されており、これはウイルスの感染力をより強くしたと考えられている。
米イェール大学の遺伝疫学の専門家ジョセフ・フォーバー氏は、前出の論文の執筆には携わっていないが、「国民の間に広がっている突然変異を見つけるには、こういった研究がもっと必要だ。ウイルスをさかのぼって調査すれば、変異で感染力が強くなったかどうか分かる」と述べている。
論文によると、新しい変種は6つの特徴的な遺伝子変異を持ち、6月にスペイン北東部の農業従事者の間で出現した。その後地元の人々の間で急速に広がっていったという。
同プロジェクトに携わる連邦工科大学チューリヒ校のタニャ・シュタードラー教授(進化計算学)によると、欧州全土から採取したウイルスサンプルの分析結果から、(今回の感染拡大は)同じ変種に由来することが判明したという。
また、論文の共著者であり、SARS-CoV-2のゲノム疫学研究を行うスペインの共同事業体SeqCovidの責任者を務めるイニャーキ・コマス氏は、「こういった変異株は『スーパースプレッダー・イベント』を介して急速に拡散することがある」と付け加えた。
スペインを訪れた旅行者たちが、人と人の間に十分な距離を保つソーシャルディスタンシングを無視するといった「リスクの高い行動」を「本国に戻ってからも続けた結果」、新しい変種の拡散につながったと研究者らは結論づけている。
調査の結果、英国における新たな症例10人中8人以上がこの変種によるものであることが判明した。スペインでは8割、アイルランドでは6割、スイスとフランスでは4割を占める。
今年初頭に世界各地で実施されたロックダウン(都市封鎖)は、COVID-19の第1波の抑制に貢献した。その後、夏の間も新規症例数は大幅に減少していた。
だがここ数週間で、ウイルスは欧州で再び猛威を振るい始めた。感染者の爆発的な増加を受け、各国政府は再び社会生活を制限する厳しい措置を取らざるを得ない状況に追い込まれている。