鳥インフル 全国で殺処分935万羽 最多見通し 半数近くが千葉県

千葉県内ではこの1か月半の間に鳥インフルエンザが8件相次ぎ、処分数は400万羽に上ります。全国で殺処分されるニワトリの数は1つのシーズンとしてはすでに最多で、千葉県での処分数が全体の半数近くを占める異例の事態となることが分かりました。

鳥インフルエンザは去年11月以降、全国17の県の46の養鶏場やアヒル農場で発生し、このうち千葉県では去年12月末から1か月半のうちに8件と過去に例のないペースで発生が相次いでいます。

特に今月4日から8日までの5日間に、養鶏の盛んな県北東部の匝瑳市、旭市、多古町の3つの市と町で4件集中して発生しています。

農林水産省によりますと、全国で1つのシーズンとしては最多となる935万羽が殺処分される見通しですが、千葉県での殺処分が428万羽と、全体のおよそ45%と半数近くを占めることがわかりました。

また、採卵用のニワトリについては千葉県全体の3分の1以上が殺処分されることになります。

国の指針では鳥インフルエンザの検出が確認されてから24時間以内に殺処分、そして72時間以内に埋めるなどの防疫措置を完了するルールとなっていますが、千葉県内では大規模な発生が相次いだ影響で最初に発生したいすみ市の養鶏場の防疫措置もまだ終わっていない状況となっています。

このため資材や機材の確保などに時間がかかっている上、対応に当たる獣医師なども不足しているため千葉県は国に対して人材面などで支援するよう求めています。

養鶏場周辺では車両消毒

千葉県は、県内の養鶏場で鳥インフルエンザの発生が相次いでいることを受け、現在も、発生が確認された養鶏場などの周辺7か所で出入りする車両の消毒を24時間態勢で実施しています。

このうち、7日「H5型」の鳥インフルエンザウイルスが検出された多古町の養鶏場では県内で最大規模となるおよそ115万羽の殺処分が進められていますが、町の施設の駐車場に新たに消毒場所が設けられ、防護服を着た作業員が消毒作業を行っていました。

作業員は、消毒に来た車のタイヤや底に消毒液を吹きかけたり、運転席のアクセルやブレーキを布で拭いたりしていました。

消毒に訪れた、養鶏場などに家畜用の医薬品を卸している38歳の会社員の男性は「少し前から消毒用の石灰を多めにほしいという話が取引先から増えてきました。県内では消毒場所も増えているので、今まで以上に対策を心がけています」と話していました。

千葉県によりますと、県内で発生が相次いでいるため、多古町の養鶏場では機材の搬入や準備に時間がかかり、当初の予定より遅れ7日午後6時ごろから殺処分が始まったということです。

8日午後3時時点で8%ほどに当たるおよそ9万7000羽の処分が終了しています。

卵の値段 先月より上昇

JA全農たまごによりますと、関東地方での卵の取り引き価格の指標となる相場は、8日は「Mサイズ」が1キロ165円で、先月はじめと比べると45円高くなっています。

鶏卵の卸売り業者の担当者は「新型コロナウイルスの緊急事態宣言の発出により、飲食店向けの卵の出荷数が減り需要は抑え気味だったが、相次ぐ鳥インフルエンザの発生で需要と供給のバランスが変わってきている。鶏卵業の盛んな千葉県でかなりの数が殺処分される影響は大きい。一般の家庭に卵が届きにくくなるということは起きないだろうが、スーパーでの卵の特売の機会は減る可能性がある」と話しています。

専門家「4月まで気が抜けず」

鳥インフルエンザに詳しい北海道大学の迫田義博教授は、現在の県内での発生状況について「野鳥によって運ばれたかどうかなど原因の特定はできないが、千葉県の養鶏場の周辺環境の中のウイルスの濃度が非常に高くなっていると言えるだろう。このウイルスはちょうど1年前ぐらいにヨーロッパで猛威を振るい、その後、渡り鳥によってシベリアを経由して、韓国、日本まで受け継がれてきて、伝ぱ力が強く、手ごわい相手と戦っている状態だ。この時期は、日本国内を移動する鳥も多く、今後、千葉のみならず、どこででも発生する可能性がある。3月や4月に入るまでは気が抜けない」と指摘しています。

また、養鶏業者などに対しては「衛生対策をしっかり取っているとは思うが、防鳥ネットや消毒などの基本的な対策が徹底されているか今一度確認してほしい。養鶏場の敷地内すべてにウイルスを持ち込ませないことは難しいかもしれないが、鶏舎はなんとか守ってほしい」と話しています。

さらに、一般の消費者に対しては「スーパーに並んでいる卵や肉は安心して食べてほしい。一方で、死んでいる野鳥を見つけたら、貴重な情報になり得るので、自治体などに連絡してほしい」と話しています。

一方、大規模な養鶏場での発生が相次ぎ県内で防疫措置が遅れていることについては「東京という一大消費地を抱える千葉では、生産効率を重視した大規模な養鶏場も増えてきたが、いったん発生するとその後の対応が非常に大変で、封じ込めに時間がかかってしまう。次の鳥インフルエンザのシーズンを迎えるまでの夏の間に、今シーズンの状況を教訓にして新たな対応策も考えていく必要がある」と話しています。